「紅」は「緑色」…
これまた、最近の取材でびっくりしたことがありまして…
「紅」について取材していた時のことです。
「紅」とは「紅花」からとれる色です。
花からは、なかなか染められないものなのですが、「紅花」は特別です。
黄と赤の混ざった花びらを摘み、そのなかの「赤」の色素だけを取り出します。
それは全体の分量の1%という…とても貴重なものです。
光で退色しやすく…
最初はピンク色に染まり、何回も何回も重ねて染めることで「紅」になっていきます。
ちょうど7月は「紅花」の咲く季節で、私がうかがったときは、ポツポツ咲き始めていました。
その花びらを摘み、「紅」だけを取り出し、「紅餅」にして保管します。
その「紅」を、口にも差せるように…
陶器の内側に塗って保管したものもあります。昔の「口紅」です。
それを見せていただいたのですが…
なんと! 「紅」が「緑色」なのです!
正確に言うと…金属光沢のある緑色…「玉虫色」のような感じです。
見せていただいた時に…驚きました!
「『紅』なのに、どうして『緑色』なの??」
中国製の「紅」もありましたが、こちらは「赤色」でした。
日本の白鷹産の最上紅花を使って、純度をあげて乾燥させると「緑色」になるのだそうです。
そして、その「緑色」の部分に「水」を含ませた筆をつけると…すぐに「赤色」になるのです!!
これを見たとき…仕事のことは遠のき(笑)…もう、ただただ…驚きました。
まさに、このブログで私が何回も追及してきている「青(緑・翠)」と「赤(朱・紅)」の謎を、
そのままあらわしているような…
目の前で見せてもらったような…
なんとも不思議な気持ちでした。
「紅」のなかには、
「青(緑・翠)」⇔「水」⇔「赤(朱・紅)」
という関係が成り立っているようです。
そう…古代のことを調べていると…
背景に、科学(化学)の知識があることも…よくわかるのです。
文学のなかでも、表現のなかに巧みに使われています。
当時の知識人は、本当にいろんなことを知っていたのだと感服します。
「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」
在原業平は、この「和歌」で何を伝えたかったのだろう?
以前、私がこのブログで書いた時には…
私の染織の知識から、「くくり染め」による「血」のイメージがあったのですが…
今回、「紅」の「緑色」をみて…
…もうひとつ、意味が含まれているように思われました。
見せていただいた「紅」の「緑色」が、あまりにも美しすぎて…
「紅」の本来の姿(?)は「緑色」なのだという…そんな暗示をもらったようで…
私の心は、また、ザワザワし始めるのです…。