機織姫を探して…

今、私はひとりの姫を探しています。 その姫と…私は伊豆の山ですれ違ったようです。 …それからいろいろなことがつながり始めました…

「からくれなゐに水くくるとは…」

先日の「赤」の連想から…私の頭に浮かんできたのがこの和歌。

 

「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」

 

古今和歌集』『小倉百人一首』にある在原業平の歌。

小倉百人一首』は、小学生の頃よく冬休みの宿題に出され、お正月など必死に暗記していたなあ…と思い出します。

その甲斐あってか…大人になった今でも、何かの折にふと、その和歌のフレーズが出てきます。

 

「からくれなゐ」ということばに、何かひっかかったのでしょうね。

「唐紅」

私の意識する「赤」には「唐」が関係するのかもしれません。

 

それにしてもこの歌、あらためてみてみると…とても意味深な感じなのですね。

 

ちはやぶる 神代(かみよ)も聞かず竜田川(たつたがわ) からくれなゐに 水くくるとは   在原業平朝臣

【歌意】不思議なことが多かったという神代にも聞いたことがない。一面に紅葉が浮いて流れる竜田川が、真紅に水をくくり染めにしているなどとは。

【作者】(ありわらのなりひらあそん) 平城天皇の皇子阿保親王の第五子。在原氏を賜る。在五中将ともよばれ、『伊勢物語』の主人公にも擬せられる。六歌仙の一人。

【説明】「ちはやぶる」は「神代」にかかる枕詞。二条后(清和天皇の后)が東宮の御息所とよばれていたころ、御屏風に竜田川に紅葉が流れている絵が描かれていたのを題にして詠んだ歌(屏風歌)。屏風歌の流行が、古今集時代の歌風を風雅ならしめた原因とされる。

 

秋になって竜田川に紅葉の葉が浮かび一面に真っ赤になっている風景は美しいと思います。

それを「くくり染め」という表現にしているのが素敵です。

「くくり染め」というのは「絞り染め」のことです。

川一面がまるで織物のように浮かび上がります。

 

…でも…少し怖い感じもします。

「くくり染め(絞り染め)」とは…糸で布をぐるぐる巻きにして、その部分だけ染めない方法なのです。

隙間があればそこから染料が染み込んできてしまうので、ぎゅっときつくぐるぐると糸でくくりつけるのです。

 

その感覚を…私は自分も染織をするのでわかるのですが…

今となってこの和歌を詠んでみると…なんとなく…この紅葉で染まった赤の色は…きつくくくられた、そこから流れ出た血のように思えてくるのです。

 

くくられたのは「水」なのですよね。

 

在原業平…どんな人なのだろう。

伊勢物語』も読んでみなければいけませんね…。