機織姫を探して…

今、私はひとりの姫を探しています。 その姫と…私は伊豆の山ですれ違ったようです。 …それからいろいろなことがつながり始めました…

「戦友の死」…「同志」「鳥海山」

 

今、涙があふれて、とまらないのです。

 

私の親友…

昔の仕事の戦友が…亡くなりました…

 

 

今年も、「彼」からの年賀状は届いたのに、

私が送ったメールには…返信が来なかった…

 

今までそんなことはなかったから、

透析の調子が悪くなったのかなと

心配になったけれど、

 

「忙しいだけだよね」と…

 

だって、ついこの間だって、

「彼」が音をつけた番組の感想を

メールで話し合ったばかりだったし…

 

その後も…

私は、子どもの受験があったり、卒業、入学があったり…

いろいろ忙しい毎日が続いて、

日々が過ぎて行ったけれど…

 

 

先日、用事があって、「鶴岡」に行った。

予定まで少し時間があったから、

海岸まで出て、私は「海」をみていた。

 

「海」をみていたら、

なんだか「彼」にメールしたくなって、

久しぶりにメールを入れてみると…

 

「error」で返ってきた。

 

え?

 

急いで電話すると

「現在使われておりません…」

 

 

胸騒ぎがして、

昔の先輩の連絡先を探し出して連絡を入れてみた。

 

すると…今年の元旦に亡くなったと…

 

直前まで仕事をしていたのに

とても急なことだった…らしい…

 

コロナのこともあり

身内だけの葬儀だったので、

先輩も最近まで知らなかったという…

 

 

なんだか…とても切なかった…

 

私は、今は、遠く離れてしまって、

メールや電話だけだったのだけれど…

 

メールや電話だけの繋がりだと、

当人が亡くなったら…

当人が連絡できるはずもなく、

突然プッツリと…途切れてしまうんだ…

 

この間まで、

フツーにやりとりしていたのに…

 

もう、あの優しさには、

触れられないんだ…

 

 

私が作った番組にも

本当に素敵な音をつけてくれて、

 

そして、ディレクターって、

時に、とても孤独になるのだけれど

彼はいつも、私を励ましてくれて…

 

そう、あの「アフリカ」の番組から、

私たちは戦友になった…

 

 

その後も、

私が担当する番組の音響効果を

お願いした。

 

MAが終わって、深夜、

渋谷の店は閉まっていたから、

新宿ゴールデン街によく繰り出していた。

 

 

あれから時は経って、

私は私で、こんな生活をしていて…

でも、あの頃のことは、ずっと忘れられないし、

 

「彼」と久しぶりに逢ったり、話をしていると、

あの時で…時がとまったままで…

 

本当に…楽しかった…

 

もう一度、彼の音効が聞きたい…

もう一度、彼の声を聴きたい…

 

 

NHKスペシャル」「ETV特集」など…

 

局内のディレクターたちは、

「ここぞ!」と勝負するときには、いつも、

「彼」の音響効果を指名していた…

 

 

番組に音がつくのは…

編集も終わり、もう少しで完成というところ…

 

私は、MAの部屋で、

この番組に…「彼」がどんな音を考えてきたのか…楽しみで…

 

でも最初聞くと、大概さりげなさ過ぎて

「もっと音を足してほしい」って思うのだけれども、

それにナレーションがのっかって、完成を聞くと

「なるほどーーー!」となる。

 

そして、私が考えていたよりも、

何倍も、何十倍も、いい番組になっていて…

 

私は…

「彼」がこんな風に、この番組を読み取ってくれていたことに

「脱帽」するのです…

 

 

番組の登録が終わったら…

やっぱり「深夜」、新宿ゴールデン街のまっちーのお店に行って、

「いい番組ができたねー」と感想いいながら、ささやかな「打ち上げ」をして、

明日からは、次の番組へと向かうのが…

私たちの…「日課」…でした…

 

 

私が、辞めて、遠く離れてしまってからも、

「このOAみて」と

「彼」が音効を担当した番組の、放送日のお知らせがきて、

そのあと、「感想」を話し合うのが…恒例となっていて…

 

 

でも…もう「次」は…ないんだ…

OAの連絡も…もう…届かないんだ…

 

 

寂しい…

 

なんだか…置いてかれた感じ…

 

そう…早すぎたんじゃない…

次へ…先に行ってしまったんだね…

 

置いて…いかないで…

 

 

「同志」…だったん…だから…

 

 

 

鶴岡での用事は…

なんとかやり過ごしたけれど

気持ちは収まらなくて

用事が終わってから、もう一度、海岸に戻って、思い切り泣いた…

 

泣いているうちに…

この海が見える、この場所で

「彼」の訃報が聞けたことに…感謝していた…

 

「海」が…受け止めてくれた…

 

これは「演出」…

「私」と「彼」の…最期の「番組」…

聞こえてくる「波の音」や「海鳥の声」は…

「彼」が、私のために用意してくれた、最期の「音響効果」…

 

 

帰り道…

時間はかかっても…「海」のみえる道を走りたかった…

 

この海岸の道は…ここ数年の「取材」で、何度も通った道…

 

「海坂(うなさか)」…

「海の名前のついた鳥居」…

 

きっと…ここは…私にとって…とても大切な場所…

 

 

ふと…何か気配を感じて…

車を運転しているのに…ハンドルをにぎったまま…

私は「後ろ」を振り返っていた

 

すると…そこに「大きな山」があった

 

 

え? こんなところに?

 

 

急いで車を停めて、海岸に出てみた

 

その山は…「鳥海山」…だった…

 

 

この場所からみえる「鳥海山」は

「海のむこう」に…あった…

 

その姿をみたとき

「ああ、『彼』は『鳥海山』になったんだ…」

と、私は、思った…

 

そう…これは…

「頭」ではなく…「心」で感じたこと…

 

 

鳥海山」は…優しく私を包んでくれた…

 

寂しい…

でもきっと…「彼」は…あの「山」にいる…

 

 

「同志」…

 

 

「目尻に入れ墨のある勇者」も…「同志」だったんだ…

 

「青い姫(伊波比咩)(イワヒメ)」も…

「目尻に入れ墨のある勇者」が亡くなった時に

 

きっと…こんな気持ちになったのだと…

 

わかった…

 

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